キヤノンの赤ラインレンズNewFD50/1.2Lです。赤ラインはLの証。LはLuxuryのL。Luxuryは贅沢品。そう、Lシリーズは高性能の証ってワケでは無く贅を尽くした証なんですね。
贅沢ってなんでしょう?贅沢で無い物って言うのは、必要にして十分の質を満たしていて余った事が無いのが実用品。実用に耐えないのは劣悪品とか粗悪品です。すると贅沢品は実用品に事足りる以上の手間なりコストなりがプラスされて居るのが贅沢品です。
でも、これって実は結構難しい話なんですよ。必要にして十分な物に余計に何かを足すと、それが害になっちゃう事があります。それを無駄って云います。そうすると贅沢品って奴は必要以上に手間なりコストが掛かって居て、それが僅かでも性能アップになっていたり、もしくは実用品と変わらない性能を維持しているのが贅沢品です。陶器より高価な宝石を削って作った杯が、陶器より酒が不味かったら、それは無駄。言い換えると無害の無駄は贅沢。
富国強兵、進め一億火の玉だ、欲しがりません勝つまでは、ぜいたくは素敵だ!
LレンズのLはLuxuryのLと言われて、なぁ~んて事を思いながら手の中のレンズを眺めてしまいます。
キヤノンの提示する贅沢は控えめです。凄いだろ~的な装飾も無く赤いラインが一本入ってるだけ。贅沢なのは中身って事ですね。素晴しい。ハリボテの外装の装飾的な贅沢より僕はこっちの方が好きです。装飾が立派なだけの贅沢品には余り手が伸びません。
Lのつかない通常品のNewFD50/1.2とパッと見では赤ライン以外は同じに見える位です。
並べてみても赤ライン以外の違いは手にして比べてみないと判らない位です。
研削非球面レンズを一枚使用して開放での描写性能をアップしてあるのが、カタログ的な謳い文句の贅沢な所です。その贅沢を早速試して行きます。
開放 - α7、JPEG
お猿さん、品のある写りです。Lでは無いNewFD50/1.2も優秀なレンズで良い写りですが、それとは傾向が違う様子です。Lの方が背景は柔らかいです。それでいて中心付近の描写もシッカリしてます。これが非球面レンズの為せる部分なのかは判りませんが、確かに中々無い上品な描写に思います。
このレンズは最近入手しましたが、以前から作例等を拝見しながらずっと昔から気になって居たレンズでした。70年代、80年代のキヤノンとニコンで競ってリリースされた非球面採用の大口径標準レンズの中で、僕が作例等から見て一番良く写るレンズに思えて居たレンズでした。
今回、お猿さんをの写りを見て、背景が綺麗にボケて品のあるフォーカス部に昔思った写りの良さを確認出来ました。立派な写りです。
開放 - α7、JPEG
フォーカス部のキレ、全体のコントラスト、非常に優秀に見えます。F1.2大口径でもモヤっぽさがありません。ボケの中をよく見ると非球面レンズの研削痕が見えます。
F2 - α7、JPEG
F2に絞ると文句なし。否、F1.2でも文句ないです。お猿さんでもフチ子でも近くを開け気味で撮ると並のレンズとは明らかに違うのがわかります。並以上の贅沢性能です。流石Luxury!!
F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop
F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop
通常運転で絞っての撮影です。撮っていて不満も無くよく写ります。
F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop
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F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop
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不満は無いのですが、Lightroomで現像してPhotoShopで仕上げていると絞りを開けて撮ってるカットと比べて驚きがありません。抜けやコントラストはあるので見栄えは黙って見せればバレない位には立派に写ります。でもチョット全体にキレ不足・・・
F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop
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F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop
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不満は無いのですが、Lightroomで現像してPhotoShopで仕上げていると絞りを開けて撮ってるカットと比べて驚きがありません。抜けやコントラストはあるので見栄えは黙って見せればバレない位には立派に写ります。でもチョット全体にキレ不足・・・
絞りを開けて撮影は並の大口径レンズより1段上の写りを見せてくれます。これは素敵。
F1.2 - F1.4 - F2 - F2.8 - F4 - F5.6 - F8 - F11 - F16
遠景テスト、開放は中心はハロ少なくキレもあります。50/1.2としては上等な描写で優秀。Lレンズでは無いNewFD50/1.2のテストと比較してみると面白いです。Lではない標準品も大変優秀なレンズです。2本を比較すると開放での描写は50/1.2Lが勝ってるように見えます。少し絞ってのF1.4も50/1.2Lの方が上。
F2あたりから優劣が怪しくなってきます。標準品の50/1.2が絞るにつれてグングンと画質が上がってくるのに比較して50/1.2Lは中心部は上がっても周辺画質が思いの外上がってきません。
僕が普段の撮影で多用するF8で比較してみると、標準品の50/1.2は全体でキレキレで文句なし。対して50/1.2LはF8でやっと全体が均一になって来たかな?って程度で周辺の線にキレがありません。
なるほど判ってきました。非球面レンズの目的は球面で作ったら、本来はそこでは無いはずの所に無理やりピークを持ってくる様な物だと思えます。そう考えると「彼方立てれば此方が立たぬ」で通常ならば絞ればリニアに上がってくる画質が上がってこないのもわかります。
近景を撮った背景のボケは大変好ましい物だと感じます。リンギングがなく柔らかいです。通常ボケが綺麗で柔らかいレンズはピント部のキレも無いのが普通ですが、このレンズは開放からシッカリとキレがあります。絞っていってもその傾向は変わりません。F2.8、F4も大変素晴しいです。フチ子で見えた研削痕はこの条件だと判りません。
玉紋です。玉紋についてはXenon50/1.4の記事を見て下さい。
年輪状の研削非球面の研削痕がクッキリです。現在のレンズと比較してみたいのですが、生憎私は研削非球面レンズを採用した新しいレンズを持っていません。(よく調べると持ってるのかも知れないけど・・・)
玉紋は今後の研究課題として記録をして行きます。サンプルが貯れば、そこから何か見えて来るかも知れません。
さてキヤノンが提示した贅沢レンズはどう評価しましょう。冒頭に害の無い無駄は贅沢だと云いました。その点では遠景を絞った描写では標準品に負けて居るので害があると言えます。しかし、絞りを開けて近景を撮った描写は標準では得られない描写です。万能では無いけど一芸に特化した高級品と言うのも贅沢品には間違いありません。その点でNewFD50/1.2LのLは間違いなくLuxuryのLですね。
贅沢はス・テ・キ。