2020年12月15日火曜日

Schneider - KREUZNACH XENON 50mm1:1.4(16)Φ49 (8101204)


今回のはソコソコ珍品度高い品です。90年代後半(1997年か98年くらい)にサムスンが北米で発売した一眼レフSR4000用の標準レンズXenon 50/1.4です。SR4000用の単焦点レンズはコレ一種。他にはズームが3本ありました。

売っていた当時、広告にはSchneiderの50/1.4が用意されてるカメラって事を売り文句にしてたのですが、どこを調べてもSchneiderの50/1.4って買いてあるだけで、レンズの名称の記載を見つけられません。個人輸入で買って届いたのを「クセノタールかな~?」なんてワクワクしながら開けたらクセノンでした。Xenonで50/1.4ってレンズはコレしか思い当りません。


Xenon 50/1.4を装着したカメラの雄姿は、こんな感じ。スイートとキスを足して割った様な姿です。見た目はAFカメラにしか見えませんがMFカメラです。取説に記載されていたマウント名称は「Samsung MF mount」となって居たので、将来的にはAFに発展させたかったのでしょうね。このカメラについては、いろいろ興味深いカメラなので別の機会に紹介しようと思います。今回はこのレンズの話で進めます。

Schneider - KREUZNACH XENON 50/1.4の母艦
Samsung SR4000の紹介動画つくりました。


レンズマウントはミノルタAマウントにソックリです。AFカプラーが無い以外は本当にソックリで粗一緒です。バヨネット羽根の長さが一箇所長くなっていてAマウントにはハマりません。


カメラ側もAマウントにソックリさん。電子接点のプラ部材にスペースが余ってますから拡張も考えて居たのでしょうね?


ミノルタAF50/1.4と同様形式の組込みフードがついてます。どこまでもミノルタっぽいです。これを見てミノルタの技術供与があったと考えてる人も居ますが、僕の考察は勝手に真似た物だと考えてます。カメラやレンズはミノルタやキヤノンに似た所が多見されるけど、イロイロとトンチンカンな所も散見されます。なので恐らく自ら開発したと考察。本当の所がどうだったのか気になります。


α7(ILCE-7)にはバヨネット爪の一部を削ったAマウント-Eマウントアダプターを介してアッサリと付きます。絞りレバーの位置も同じ。そしてなんとフランジバック長も同じでした。部材としてはハマってもフランジバック長は違って調節必要かと思っていましたが、そのままで無限来たのでビックリ&楽チン。

レンズと関係無いですが、愛用してる初代α7がカタログ落ちしてしまいました。発売から7年ほど経ってるので、程度の良い中古も少なくなって居て、使い続けたいので購入出来る内にと新品買い足しましたよ。写真の個体は新しい奴。なんですが埃がすでに付いてます・・・

Youtubeで素7(α7)への愛を語りました。 蛇足なので観ないでも、このレンズの話には全く影響無いです。


写真の矢印のバヨネット爪をハマる様になるまで適当に削るだけでOK。削ってもAマウントアダプターとしてもそのまま使えるのでミノルタAマウント&サムスンMFマウント両用アダプターになります。

LA-EA3やLA-EA5を削って自動絞りが機能するかは不明・・・たぶん電気信号的には異なると思うので無理。一時期このレンズのROM改造品がネットオークションで売ってたのを確認してます。恐らくミノルタAF50/1.4のROMに換装して物だったのでは?

SR4000用には他にズームレンズが3本カタログに記載がありました。28-80,28-105,70-210だったと思います。27-80にはMade in Koreaの表記がありましたが、このXenon 50/1.4にはMade in表記が見当たりません。 ドイツ製とも書けないけど、韓国製とも書きたくないって気持ちだったのか・・・

このレンズがどこで設計され、どこで生産されたかは定かではありませんが、恐らく設計はシュナイダーで行われて生産が韓国だったのではないかと思ってます。

開放 - α7、JPEG

お猿さん、グリーンのカラーフリンジが僅かに目立ちますが、コントラストと解像は中々良好。

1997年と言えば日本のメーカーは標準レンズ停滞時代で、新規設計の50/1.4は開発されておらず、このレンズは20世紀最後の135判一眼レフ用大口径標準レンズかも知れない。

シュナイダーの50/1.4の名称が何なのか?クセノン?、F1.4だからクセノタールだったりしたらカッコいいなぁ~、名無しの権兵衛かも知れないし・・・とワクワクしながら開封し、クセノンだった時は嬉しいのとクセノタールじゃ無いのかとチョットガッカリした記憶があります。


開放 - α7、JPEG

最短域開放はお猿さんよりは甘め。

F2.8 - α7、JPEG

F2.8は品良くキリっと。

開放 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


開放 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


開放 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop

開放での写りは、お猿さん同様にグリーンのカラーフリンジが見えます。解像とコントラストは良好です。流石20世紀最後?のSLR用50/1.4!


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop

買った当時にSR4000で撮影してポジの上がりを見てビックリしたのを思い出します。シュナイダーの50/1.4欲しさに大して期待もせずに購入したレンズですが、ポジフィルムで撮った結果をみて「メチャクチャ良く写るや~ん!これはシュナイダー確定!」と勝手にシュナイダー設計と確信したのでした。(根拠無いけど夢見たい)

α7で撮った印象もフィルム撮影の時の印象のままに良く写ってます。線が綺麗で端正な写り。


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop


F8 - α7、RAW>Lightroom>PhotoShop

さて、大変好ましい写りでデジタルで使っても嬉しいレンズのXenon50/1.4でありますが、興味深い事に気づいてしまいました。


この写真は「海ほたるPA」で夜景撮影をする時にピントを外して「流行りの玉ボケ~」と遊んで撮った写真です。これの真ん中のオレンジの玉ボケが判りやすいのですが、中に年輪状の縞々が見えます。青い玉の方は判りません。フォーカスを外して点光源を撮ると絞りの形状やレンズの中のゴミやカビの様子が見えるのは知ってましたが、レンズの研磨状態まで見えるとは思っていませんでした。


自宅にてイロイロ試して見たところ、光源がオレンジだとレンズの様子が非常に良く写る事がわかったので自宅で撮りなおして、白黒化してコントラストを調節して判りやすくしたのがこれです。こうして見えたパターンはレンズの指紋と言った所でしょうか。これを玉紋(ぎょくもん)と呼ぶことにしました。

年輪状の縞々と放射状の線が見えます。黒い点は中のゴミなので気にしないでいいです。上の欠けの様な斜めの線も気になりますけど・・・

このXenon50/1.4は非球面レンズは謳ってません。非球面を採用していれば恐らくセールスポイントとして堂々と謳って居たと思うので、球面レンズのみの構成だと想像します。球面レンズだとするとこの縞々はなんでしょう?上の斜めの線はバル切れでしょうか?レンズの中を目を凝らして観察しても縞々も欠け状の線も目視出来ません。ゴミは見えます。


これはCanon NFD50/1.2の玉紋です。球面レンズのみ構成のレンズなのでツルツルに綺麗です。


これはもっと古いAUTO MIRANDA50/1.4の玉紋です。コーティングの状態が劣化してるのかNFD50/1.2より荒れてる感じです。でも、Xenonの様な縞々は皆無です。これを見ても球面レンズの場合は通常は綺麗に研磨されてるのが伺えます。


これは研削非球面レンズを後群に一枚採用したCanon NFD50/1.2Lの玉紋です。年輪状の研削痕がハッキリ判ります。

さて、これらを幾人かのエンジニアの方にサムスン・クセノンの状態をどう考えるか質問してみましたが、球面ならば通常はこうは成らないとの見解でした。

考えられるのは処理が悪い。仕上げが雑って話でした。

実写ではボケの中に玉紋が現れる以外には影響は殆ど無いと思えますが、雑だと思うと少々残念にも感じます。僕はこれを見つけて新たな興味の対象が見つかって少々ワクワクしてますけどね。80年代のNFD50/1.2Lはハッキリ縞々ですが、最新のライカやコシナの研削非球面の玉紋はどんな様子でしょうか? 同時代のノクトニッコール58/1.2の玉紋も興味しんしんです。


これはモールド非球面と思われる、SIGMA 50/1.4 DG HSM EXの玉紋です。円が歪なのは撮影時に絞り羽根がチョット出てたからで丸いレンズです。それよりもモールド非球面は縞々ではなく凸凹してる様子が見えます。

最近勢いのある中国製のレンズや韓国製のレンズの現在の仕上げクオリティはどんな物なのでしょうか?玉紋を撮ったら楽しそうな興味深いレンズは数々あるので機会があれば、否、機会を出来るだけ作って玉紋集めを新たな楽しみにしたいと思ってます。他のレンズオーナーさん達にも協力して貰ったらより多くの玉紋が取れそう。そうなったらネット上に玉紋アーカイブでも出来れば楽しそうです。

クセノン50/1.4の話から脱線して来たので恒例テスト撮影結果を掲載して閉じる事にします。

F1.4F2 - F2.8 - F4 - F5.6 - F8 - F11 - F16

開放は現代の基準では甘いと思いますが、20世紀の50/1.4とすれば並以上です。F2.8からは優秀。F8では隅までシッカリ解像してます。解像の良いレンズは手前のビルのタイルの質感が現れます。ビルのシャッター等横縞パターン部分等で擬色が出るのも解像の良い証。玉紋をみると雑なんだとは思いますが、撮影結果は良く出来たレンズです。


F1.4 - F2 - F2.8 - F4 - F5.6 - F8 - F11 - F16

グリーン系のカラーフリンジはカブのテストでも見えます。パープルフリンジは目立ちません。F2やF2.8の写りは大変上等な写りだと感じます。

レンズだけでなくカメラも珍しい物で、更に玉紋と話が広がって長くなりました。入手までの過程も併せて思い入れのあるお気に入りの一本が、α7で使ってみたら更にイロイロな意味で面白味のある存在となりました。どこかでこのレンズに出会ったら即買いするか、ご不要でしたら僕に一報下さいw

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